2016年5月26日木曜日

ル・コルビュジエの17作品が世界遺産へ



ル・コルビュジエの作品群を世界遺産にしようとの活動がスタートして、紆余曲折の末、今回の推薦書提出を受けて20167月発表時に世界遺産として認定される見通しである。

先週の講演会「わが国の近代建築の保存と再生」第15回「世界遺産の観点からみたわが国の近代建築」において、元文化庁の役人でイコモス会員・日本ユネスコ委員会委員長代理として日本の世界遺産申請に関しスイスやオランダで活躍されてきた稲葉信子氏(現筑波大学大学院教授)の講演を拝聴してきた。氏は法隆寺や姫路城などの申請時から世界遺産登録に関わって来られたのだが、講演会の趣旨に従い、近代建築が世界遺産に登録され始めた経緯から、ル・コルビュジエの作品群の扱いに苦慮してきたことなどが中心の話であった。

世界遺産に近代建築を「近代建築・近代遺産」として登録しようとの機運は早くからあった訳ではなく、最初の登録が1984の「アントニオ・ガウディの作品群」である。その後、ブラジリア、バウハウス、リートフェルトのシュレーテル邸、ヴィクトール・オルタの邸宅群、ミース・ファン・デル・ローエのトゥーゲントハット邸などが続き、シドニー・オペラハウスに至る。当然のこととして、ル・コルビュジエの作品群をどう扱うか、世界遺産における近代建築の評価基準をどうすべきかが大きな問題となってくる。少なくとも建築家の存命中は無理であるとか(シドニー・オペラハウスはヨルン:ウッツオンが存命であったため審議延期になった経緯がある)、建設後最低25年は経過していることなどとの興味深い話を聞くことができた。

世界遺産候補として「ル・コルビュジェの作品 6か国22資産」が最初に申請された2008の時点では、ユネスコの諮問機関であるICOMOSは「記載延期」と勧告した。続いて2011に「6か国19資産」として情報照会した際にICOMOSは「不記載」(世界遺産の価値なし)の勧告を出した。しかし、世界遺産委員会は、1段階戻し「審議延期」として、世界遺産登録の可能性を残した。

現在の推薦内容は下記の通り、チャンディガールを含み、7か国17資産となっている。

フランス:ジャンヌレ邸、ペサックの集合住宅、サボワ邸、
     ナンセジュール・エ・コリ通りのアパート、マルセイユのユニテ、サン・ディエの工場、
     ロンシャンの礼拝堂、カップ・マルタンの小屋、ラ・トゥーレット修道院、
     フィルミニの文化と青少年の家
スイス: レマン湖畔の小さな家、イムーブル・クラルテスイス
ドイツ: ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅
ベルギー:ギエット邸
アルゼンチン:クルチェット邸
インド:チャンデガールのキャピトル・コンプレックス
日本: 国立西洋美術館


上野の国立西洋美術館

今年は、フランク・ロイド・ライトの審査も行われる予定だそうである。
今後、日本から推薦する近代建築はどのような概念で選定すべきであろうか?
例えば、丹下健三さんの代々木のオリンピック競技施設などと単純に言えるものではなさそうである。

近代遺産の登録に向けて最初からリードしてきたオランダの経緯を考慮すると、リートフェルトのシュレーテル邸の早期登録は理解し易いものの、メキシコのルイス・バラガン邸と仕事場の登録に至っては、どうしてコルビュジェの作品が落選を繰り返すのか理解に苦しむと言えよう。
それぞれの申請内容や選定理由などをみても、コルビュジェの作品をイメージして読んでも違和感がないようなものであるらしい。つまり、今後選定基準をより明確にして行く作業が重要になり、世界中の多くが納得できる基準を期待したいものである。

かつて、1994年の世界遺産委員会の専門家会議で、それまでの遺産リストがヨーロッパの文化、キリスト教、選ばれた者の遺産などに偏っていたことを反省し、「文化の多様性への尊敬を込めて、より広い人類学的見地から、世界遺産の枠組みの充実と世界遺産リストの信頼性確保のための努力を行う」と高らかに宣言したことがある。
今や、世界遺産(自然遺産を含む)の選定基準に真っ向から非難する方々は少数派と言えるのかも知れないが、近代遺産についてはこれからということであろう。建築に携わる我々としては、近代遺産リストにおける近代建築の推移に注目して行く必要があろう。建築が社会にどのような影響を与え、どのように評価されて来たかを、世界中の一般認識として再確認する機会となるであろう。
 

参考文献:稲葉信子氏の配布資料、文化庁「世界遺産と無形文化遺産」


私は、最近の約1ヶ月間で、4回も美術展に行ってきた。
1.村上隆の五百羅漢展
2.村上隆のスーパーフラット・コレクション
3.レオナルド・ダ・ビンチ展
4.若冲展

更に、西洋美術館の「カラバッチョ展」にも行こうと思うのであるが、今回の世界遺産のニュースで長蛇の列との噂なので、当面、時期を見計かろうと考えている。

(阿部泰資)

0 件のコメント:

コメントを投稿