五重塔の心柱による免震機能が東京スカイツリーの制振システムにも応用されたということは、広く知られているところである。
五重塔の相輪を支える心柱は塔本体と構造上分離されており、最上層の小屋組頂部の井桁で囲われているだけである。
したがって、地震や風による揺れに対して心柱は、塔の中でゆらゆら揺れているという状態になるのである。
この異なる揺れが結果として免震性に作用していると解釈されている。
したがって、地震や風による揺れに対して心柱は、塔の中でゆらゆら揺れているという状態になるのである。
この異なる揺れが結果として免震性に作用していると解釈されている。
一方スカイツリーは、鉄骨造の塔部分と避難階段の機能をもつRC造コアが構造的に互いに独立しており、部分的に互いをダンパーで繋ぐことにより、周期の異なる揺れが塔全体の揺れを減免するという設計になっている。
まさに五重塔の心柱からヒントを得た設計といわれる所以である。
まさに五重塔の心柱からヒントを得た設計といわれる所以である。
東照宮五重塔の心柱は、塔の四層部分から鎖で吊り下げられており、心礎から浮いた状態にある。五重塔として非常に珍しい心柱の構造である。
塔身が縮むことを考慮し、更に最上層屋根の相輪根本部分の防水を確保するという非常に高度な設計である。
五重塔建設の歴史上後期に当たる江戸時代に建てられたことが、心柱の目的性を明確にし、工法を進化させたと言えるであろう。
日光東照宮の五重塔
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「五重塔はなぜ倒れないか」上田篤編 より
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五重塔を心柱に着目して、幾つか例に挙げ考えてみよう。
まず、歴史的に古い五重塔から検証しよう。
法隆寺五重塔の心柱は、基壇から地中2.5メートルに心礎がある掘立柱式である。
飛鳥・白鳳時代の塔には掘立柱式の心柱が多いが、法起寺三重塔など基壇上部に心礎を据えているものもある。
早くから掘立柱式と地上独立柱式とが混在していたものと考えられている。
飛鳥・白鳳時代の塔には掘立柱式の心柱が多いが、法起寺三重塔など基壇上部に心礎を据えているものもある。
早くから掘立柱式と地上独立柱式とが混在していたものと考えられている。
心柱の多くが三本継ぎで、塔本体の組み上げ工程に合わせて継がれていったものである。
平安時代以降の三重塔では、心礎を据えず、心柱を初層天井裏の梁に立てている。
鎌倉時代になると、海住山寺のように五重塔にも初層天井裏の梁に心柱を立てる例が出始める。
以降江戸時代まで、二種類の心柱の工法が混在している。
塔はもともと釈迦の墓として伝来したものであり、塔の内部には釈迦にまつわる像が安置された。
心柱は釈迦如来を表すとされる一方、密教では大日如来を、あるいは薬師如来を表すとも解釈されるようになった。
初層に心柱がなくなると内部空間が広くなり本尊を真ん中に安置するなど、より宗教的意味合いでの利点が増すことになる。
| 岩船寺の三重塔 |
岩船寺三重塔の内部
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五重塔・三重塔共に、塔本体は圧縮によるつぶれや乾燥収縮などにより塔全体の髙さが徐々に低くなる。
一方で心礎に立つ心柱はほんど縮まらず、相輪の位置は変わらない。
よって相輪最下部の露盤と最上層屋根との間に隙間が生じ、雨漏れの原因となる。
そこで、熨斗瓦や銅版で隙間を塞ぐか心柱を切り詰めて相輪を下げるなどの補修を行ってきた。
三重塔ではほとんどなくなった心礎に据える心柱構造が五重塔では半数以上に採用されてきたことは、大架構体に対する保守的な発想に起因したものであろうか。
| 「五重塔はなぜ倒れないか」上田篤編 より | ||
時代が進み江戸時代になると、日光東照宮五重塔のように懸垂式の心柱が新たな工法として現れる。
東照宮五重塔の心柱は、前述の通り、四重の梁部分から四本の鎖で吊り下げられており、心礎から浮いた状態であり、先端の長い枘が心礎に掘られた枘穴の中で振れ止めとなっている。
心柱を塔本体から吊ることにより心柱および相輪も塔の縮み具合に合わせて下がるため、最上層屋根と相輪下部の露盤との間に隙間が生じることはない。
懸垂式心柱の工法は、谷中の感應寺五重塔にも採用さえているが、同時代の多くの塔で採用された訳ではなく、当時の技術伝達が容易でなかたことにも関係するであろう。
五重塔・三重塔が建てられた1000年を超す歴史の中で、心柱が工法の変遷はあるものの免震装置としての機能を担っているとの理解は明確であった。
耐震・免震の常識では軽さの要素が重要度の上位とされるが、木造の塔では積み重ね方式の構造故、上層部荷重とバランスをとるため庇に敢えて重い瓦を乗せざるを得ない。
そこで免震の切り札となるのが心柱という訳である。
長きにわたる日本古来の伝統技術である五重塔心柱理論をヒントにスカイツリーは設計されたのである。
参考文献:「五重塔はなぜ倒れないか」上田篤 編
NHK美の壺「五重塔」
(阿部 泰資)





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