大学の親しい同期5人で恒例の温泉忘年会として、今回は上諏訪温泉を訪ねた。
その主たる目的は片倉館と5つの蔵元を巡っての試飲である。
片倉館はご承知の通り「あゝ野麦峠」の養蚕工場における福祉施設だ。
森山松之助氏(東京帝大造家学科)の設計で昭和2年の竣工と言われている。
片倉組二代目の片倉謙太郎氏が大正末期に視察してきた欧米における福祉施設の充実ぶりに感銘を受け、片倉館建設へとの流れが始まったと言われている。
ちなみに、森山松之助氏は日本の台湾統治時代に台湾総督府をはじめ多数の官庁建築を手がけ、日本では旧久邇宮邸、両国公会堂、新宿御苑台湾郭などの設計で知られている。
私自身約40年ぶりの片倉館であり、薄れている記憶を再確認させると共にメンテナンスや施設の運営維持に関心を寄せ訪問した。
労働者100人が同時に入浴できるようにと設計された浴槽は腰までの水深があり、通称千人風呂と呼ばれる浴室は以前とほぼ変わりなく維持されていた。
但し、部分的にはアルミが使用されておるのだが、浴室の水分を考慮すれば仕方のない対応とも言えようか。
素晴らしい空間の脱衣場や休憩室兼食堂に、健康器具や自動販売機などが無造作に置かれており大変気になるところである。
日帰り温泉施設とは言え、これだけの施設、これだけの空間を考慮し気の利いたアイデアで機器類を空間に同化させる工夫を望みたいものだ。
日帰り温泉施設として機能させていることが建築全体の維持に欠かせないものであると共に、メンテナンスの増大を併せ持つことが容易に推測できる。
現在国の重要文化財に指定されていることもあり、十分な維持管理がなされていると言えるのではないだろうか。
(阿部 泰資)



